上丘
関連概念 : 生物学

[SC: superior colliculus]

  

下丘とともに、中脳 の背面の隆起した部位。
網膜からの視神経線維の一部は、外側膝状体ではなく上丘に終止し、これは、哺乳類では「視覚反射」に関係している。

【神経連絡】

  

 ◆入力
  ・網膜神経節細胞(Y細胞、W細胞)
  ・外側膝状体のY型中継細胞に中継された皮質視覚領ニューロン
  ・体性感覚聴覚に関与する皮質・皮質下からの投射

 ◆出力
  ・視床枕核下側部(PI)


【構造】

 ○浅層(superficial layer)(視覚層 visual layer)
   網膜からの投射は、V層を通り、主にU・V層に終止
   ・T層、帯状層(SZ; stratum zonale)
   ・U層、浅灰白層(SGS; stratum griseum superficiale)
   ・V層、視神経層(SO; stratum opticum)
 ○深層(deep layer)
   体性感覚聴覚に関与する皮質・皮質下からの投射
   ・W層、中間灰白層(SGI; stratum griseum intermediale)
   ・X層、中間白質層(SAI; stratum album intermediale)
   ・Y層、深灰白層(SGP; stratum griseum profundum)
   ・Z層、深白質層(SAP; stratum album profundum)

神経管の翼板から分化した感覚性ニューロンは層構造を形成し、白質と灰白質が交互に並んで7層を形成し、層構造の見られない下丘とは構造的に異なる。

【特徴】

 ○浅層ニューロン
   ・静止光の点滅よりも運動視でよく反応
   ・方向選択性あるものが多い(網膜ではW細胞がわずかに持つのみ)
     最適運動方向が常に視野中心から遠ざかる方向にある
     無反応方向が最適方向と180度正反対
   ・深層に下るに従って受容野が大きくなる
   ・中心周辺拮抗受容野(上丘内GABA神経で形成されると思われる)
   ・方位特異性はない
   ・両眼性入力を受けるものが多い(皮質からの投射で説明)
   ・表層に整然とした網膜部位再現
     吻側部に中心窩、尾側部に周辺視野
     内側部に視野上半部、外側部に視野下半部
   ・近くには興奮出力、遠くには抑制出力(伊佐正)
     (抑制出力強めると興奮に打ち勝つ)
     (少し深くなるとこの傾向なくなり興奮主体に)
○深層ニューロン
   ・視覚刺激への反応は明瞭ではない
     単眼刺激に応答し、非常に大きい受容野
     方向選択性を示すものが浅層よりも著しい
   ・視覚誘発性運動ニューロン(VTM; visually triggered movement)が存在
     (視標を見せて起こったサッケードにのみ先行して活動)
     (中間層と視神経層の境界部にごくわずかに存在)
   ・眼球運動細胞(eye movement cell)が存在
     (サッケード性眼球運動に先行して活動を増す)
     (中間層・深層に存在)
   ・聴覚
      複合音に応答
      聴覚視覚両方に応答する細胞で受容野の方角が対応・一致
       (空間定位)
   ・体性感覚
      皮膚機械受容器の特に速い動き刺激に敏感
      触覚視覚両方に応答する細胞で受容野の方角が対応・一致
   ・水を飲む際のlicking(Rossi,Yin,2016)
     外側SNrからの入力

【機能】

  視覚定位(visual orientation)
  ・サッケード性眼球運動(saccadic eye movement)中心固視 foveation
    W層(中間灰白層)かやや深い層の弱い電気刺激で生起
     刺激部位は、吻側部から尾側部にいくほど振幅大きくなる
     刺激部位が、内側だと上方に、外側だと下方に眼球運動
       網膜部位再現とあわせて考えるとサッケードに有利
  ・頭部運動・体幹四肢運動
     サルでは見られなかったがネコやラットで見られる
      (サルの外眼筋の発達による眼球運動の自由で説明可能)
  ・新しい空間に注意を移すのに必要
    (Posner &Petersen, 1990; Kustov &Robinson, 1996)
  ・目立つ視覚刺激に対する応答がV1よりも早い
   (White,Munoz,2017)
    通常刺激はV1よりも遅い

【進化論的分類】

  ・視蓋(optic tectum)鳥類
  ・視葉(下等動物)
  ・上丘(ヒトなど)

鳥類以下では、上丘が視覚の中枢的働きをしており、鳥類以下の視覚は反射的なものであると推測される。

2011/12/10 masashi tanaka

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