TH
関連概念 : 生物学

[thyroid hormone]

甲状腺ホルモン。チロシン水酸化酵素は別項。
脳下垂体前葉から分泌されるTSHによって甲状腺から分泌されるアミノ酸誘導体のホルモン
チロシン水酸化酵素もTHと呼ばれる。

【分類】

 ホルモン1分子中のヨードの数が異なる2種類
 ◆トリヨードサイロニン(トリヨードチロニン、triiodothyronin、T3)
   生理活性は数倍強いが血中には少ない
   ヨード付加が3個
 ◆サイロキシン(チロキシン、thyroxin、T4)
   生理活性は弱いが血中を循環する甲状腺ホルモンのほとんどを占める
   ヨード付加が4個

【特徴】

 ◆分泌
   甲状腺の甲状腺濾胞の壁を形成する濾胞上皮細胞で合成・分泌
   細胞外にホルモンの前駆体を貯留するという点で非常に独特
 ◆サイログロブリン
 ◆構造
   チロシンが2つ縮合し、側鎖芳香環上に3-4個のヨウ素が付加
    チロシンのヨード化は、細胞内の遊離チロシンでは起こらない
    濾胞上皮細胞ではサイログロブリン (チログロブリン)
      thyroglobulinと呼ばれる巨大な糖蛋白質が合成される
       濾胞の内腔にコロイドとして蓄積している
      この細胞は血中からヨードを取り込み濾胞内に送り込む
       濾胞内ではチロシン残基ごとにヨードが1〜2個付加される
        ヨード化チロシン残基どうしが2つずつ縮合(エーテル重合)
      濾胞の内腔から再び濾胞上皮細胞に取り込まれる
       リソソームで消化を受け
       本体からヨード化されたチロシン残基が切り離される
        ヨードの付加数が3-4個のものがTHとして血中に出る
        1-2個のものは、分解され再利用される
 ◆分泌調節
  ・TSH(サイロトロピン)
    甲状腺濾胞内サイログロブリンが濾胞上皮細胞内へ再吸収を促進
      サイログロブリンは、細胞内のリソソームで消化される
       T3またはT4が遊離し、濾胞の外側に放出される
        これが毛細血管より血中に入り全身に還流する
      濾胞上皮細胞内で遊離したTHは、後に細胞内で蓄積されない
       TSHの刺激により、血中への分泌量が増加する
 ◆作用
  ・核内受容体の甲状腺ホルモン受容体を介する
    特定のRNAの転写活性を調節
  ・甲状腺ホルモン受容体は全身のほとんどの細胞に発現
  ・恒温動物では、全身の各細胞で呼吸量、エネルギー産生量が増大
     基礎代謝量の維持または促進
  ・サケ科などの魚類では海への降下時、海水適応
  ・両生類では、幼生から成体への変態を促進
  ・鳥類では、季節ごとの換羽を起こしたりする
 ◆病理
  ・甲状腺機能亢進症
    ・バセドウ病(Basedow's disease)(グレーヴス病; Graves' disease)
      手足の振るえ(振戦)、眼球突出、動悸、甲状腺腫脹、
      多汗、体重減少、高血糖、高血圧など
  ・甲状腺機能低下症
     原因に慢性甲状腺炎(橋本病)
      全身倦怠感(からだのだるさ)、発汗減少、体重増加、便秘など

2013/10/06 masashi tanaka

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