ncRNA
関連概念 : 生物学

[nc-RNA, non-coding RNA]

非コードRNA。非翻訳性RNA(non-translatable RNA)。機能性RNA(functional RNA)。

タンパク質翻訳されずに機能するRNAの総称。

ncRNAが転写されるDNA配列は、RNA遺伝子あるいはncRNA遺伝子とも呼ばれる。

【分類】

  ・tRNA
  ・rRNA
  ・mRNA様ncRNA(mRNA-like non-coding RNA)
  ・snRNA(small nuclear RNA、核内低分子RNA)
  ・snoRNA(small nucleolar RNA、核小体低分子RNA)
  ・SRA(steroid hormone RNA activator)
  ・miRNA(microRNA マイクロRNA)
  ・gRNA(guide RNA)
  ・SRP RNA(signal recognition particle RNA)(真核生物では4.5S RNA)
  ・pRNA
  ・mRNAの非翻訳領域

一部のアンチセンスRNAでみられるように、転写産物であるRNA分子それ自体には生物学的な機能がなく、その遺伝子座で転写が起こることが重要である場合や、そもそもncRNA遺伝子そのものが生体にとって必要でない場合もみられるため、すべてのncRNAが機能的であるわけではないが、機能によって様々な分類がなされている。

mRNA様ncRNAというのは、poly(A)鎖を持ち、しばしばスプライシングを受ける高分子量(数百塩基以上)の非コードRNA分子の総称。
2005年、理化学研究所を中心とする国際研究グループは、マウスの細胞内のトランスクリプトーム分析を行い、トランスクリプトームで合成される44,147種類のRNA中、53%に相当する23,218種類が非コードRNAである可能性を指摘しているが、これらはmRNA様ncRNAに分類される。
mRNA様ncRNAの代表例としては、哺乳類の遺伝子量補償に重要な役割を果たすXist RNAや、同じくショウジョウバエの遺伝子量補償に関与するroX RNAなどが知られている。
また、makorin-p1 RNAのように、偽遺伝子から転写されたmRNAによく似た構造のRNAが、元になった遺伝子の発現調節に関与する例も報告されているが、これらの例外を除くと、ほとんどのものは機能が分からない。

snRNAは、真核生物細胞核に見られる小型RNAの一群であって、RNAスプライシング(hnRNAからイントロンを除去する)や、テロメアの維持など、様々な重要な過程に関わっている。
必ず特異的なタンパク質と会合しており、これらの複合体はsnRNP(small nuclear ribonucleoprotein)と呼ばれる。

snoRNAは、rRNAや他のRNAの化学的修飾(メチル化など)に関与する一群の低分子RNAで、タンパク質と複合体(snoRNP)を形成し、核内の核小体に局在し、ターゲットとなるRNAと相補的に結合し、タンパク質が反応を触媒する。

SRAは、ある種のタンパク質と同様に、ステロイドホルモン・ステロイドホルモン受容体の複合体に結合して転写複合体となり、核内で特定の遺伝子のDNA配列に結合して転写を制御するアクチベーターとして機能する。

miRNAは、特定の他の遺伝子のmRNAに対する相補的配列を有し、その遺伝子の発現を抑制する。

gRNAは、RNA編集に働くRNAである。
これまでRNA編集はトリパノソーマなどのキネトプラスチド(ミトコンドリア)などで見つかっており、これはmRNA上で数塩基のウラシル(U)が挿入または除去されるものである。
gRNAはeditosome(編集装置)の一部をなし、mRNAの対応する配列に相補的に結合する配列を含み、mRNA編集をガイドする。
なおguide RNAという用語は、相補的結合によってRNA・タンパク質複合体をガイドするRNAという意味で広く用いられることもある。

SRPは細胞質にあるRNA-タンパク質複合体で、細胞外に分泌されるタンパク質のシグナル配列を認識するが、真核生物のSRPにおけるRNA成分は4.5S RNAと呼ばれる。

pRNAは、φ-29(DNA型バクテリオファージの1種)などを指し、これは、約120塩基の同じRNAからなる6量体を動力要素(エネルギー源はATP)とするDNAパッケージング装置を持っているが、このようなものが一般的かどうかはまだ明らかでない。

mRNAの翻訳されない領域には、部分構造として多くのncRNAが存在し、mRNA上でシスに(つまり連結した配列上で)機能する制御配列(cis-regulatory RNA)である。
たとえば特定の物質を直接結合することで転写終結や翻訳を制御する配列“リボスイッチ”や、翻訳終止の代わりにセレノシステイン挿入を指示する配列“SECIS(セレノシステイン挿入配列)”がある。

2007/08/26 masashi tanaka

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