作動剤と競合的阻害剤はどちらも同じ場所に結合するが、アゴニストでのみ開口が生じる。
アゴニスト結合のみが受容体の形を変化させて開口をもたらすと考えることもできるが、この考えは、GABAA受容体やニコチン型アセチルコリン受容体のアゴニスト結合率が拡散律速過程から期待されるよりも遅く、これがエネルギー要求性過程を含んでいると考えれば妥当であると考えられる。
これが正しければ競合的阻害剤の結合はアゴニスト結合よりも活性化エネルギーをあまり必要としないであろうため、ラット海馬歯状回顆粒細胞からアウトサイドアウト・パッチ法に適用し、GABAA受容体アゴニストとアンタゴニストの結合・脱結合時間経過を、新しい逆畳み込み法で比較したところ、アゴニスト・アンタゴニストの脱結合率は急峻に親和性と相関していたが、3/4のアンタゴニストの結合定数は速く親和性とは独立で、拡散律速・脱水律速であったのに対し、アゴニストの結合はエネルギー要求性過程を含み、チャネル開口がリガンド結合部位内でのアゴニスト依存の運動によって開始されるという考えを支持した。
【方法(Jones&Westbrook,1997; Jones,1998)】
◆アンタゴニストのキネティクス推測
・従来はSchild analysis(Lew&Angus,1995)
濃度操作によるアゴニストdose–response curveのシフト
平衡状態のアンタゴニスト解離定数の外挿は可能
結合定数・脱結合定数は分からない
・アンタゴニスト脱結合によって生じるdelay
アゴニストへのステップ応答を歪ませるローパスフィルター
信号処理法でこのローパスフィルターを解析(Balmer,1997)
・control溶液かantagonistで平衡状態
・飽和GABA濃度(10mM)のstep投与(wash)
チャネルキネティクス機構を考慮すれば飽和は必要ないかも
ただし受容体結合部位が複数あればより高信頼性
逆畳み込み手続きのS/N比上昇
・間にcompensate for current rundown(5–50 traces平均)
・電流解析
controlではGABA電流の形は主にgating kinetics依存
飽和GABAによって即座(10us)に全チャネルにGABA結合
Ictrl = Popen(t) * N_C * i_C
(Popen:開口率; N_C:チャネル数; i_C:単一電流)
antagonistでは電流は2過程の重なり
・阻害されてないチャネルで生じるcontrolと同じ成分
・阻害が次第に脱結合したときに生じる遅れた成分
controlの波形とa(t)(阻害剤脱結合率)の畳み込み
Iant = a(t) * Ictrl
・Fourier法の逆畳み込みでa(t)推測(Balmer,1997)
a(t) = F-1 (F(Iant) / F(Ictrl))
受容体利用可能数A(t)はa(t)の積分
A(t) = [ P∞ - (P∞ - P0)e^(-t/τ) ]^N
(P0: 初期状態のチャネル利用可能率)
(P∞: 定常状態のチャネル利用可能率)
(τ: 阻害剤脱結合時定数 N: 阻害剤結合部位数)
受容体阻害剤結合率B(t) = 1 - A(t)
GABAなしの定常状態ではB(∞)=P∞ - P0
B(∞)は濃度依存でHill関数でfit可能
B(∞) = 1 / (KH [antagonist]^N + 1)
(KH = koff/kon)
・有限の時間に対してフーリエ変換することによるアーチファクト減少
対称シグモイド窓W(t)掛けてtrace端を0にして逆畳み込み
W(t) = 1/2{1 - tanh[(u-t-1/2σ)/δ] tanh[(u-t+1/2σ)/δ]}
(u:窓のmidpoint, σ:width, δ:slopes)
(典型的値; u:0.5T, σ:0.9T, δ:0.05T)
(T=trace duration)
この方法で特にシミュレーションのデータの推測改善
(振幅やrise timeに影響与えずに滑らかに端を0)
(0.8T以上では逆畳み込みにedge effectあった)
・前提
・アゴニストとアンタゴニスト同時結合でkinetics変わらない
(Jones,1998)
・GABA応答は同じ線形な時不変インパルス応答である必要
(Balmer,1997)
200us以内の急速置換(液間電位で確認)
piezoelectric bimorphにおいたflowpipe array
2010/01/01 masashi tanaka
2010/01/01 masashi tanaka